4月26日にドイツのヴィルヘルムスハーフェンで行われた演奏会を聴いてきました。
詳細はこちら。
26. April 2016 20.00 Stadthalle Wilhelmshaven
Staatskapelle Weimar
Stefan Solyom Dirigent
Nemanja Radulović Violine
M. Bruch Violinkonzert Nr. 1 g-Moll op. 26
A. Khatchaturian "Nocturne" aus Masquerade
P. I. Tschaikowsky Sinfonie Nr. 4 in f-Moll op. 36
この演奏会元々は演奏曲がシベリウスのヴァイオリン・コンチェルトでした。
ネマニャ君が滅多に弾かない曲だったので、これは聴きに行くしかないと早々にチケットを入手。
ところがお正月にこの話をネマニャ君にしたところ、「えっ?僕今シーズンはシベリウス弾かないよ・・・。」とのこと。
その後、曲目がブルッフのヴァイオリン・コンチェルトとハチャトゥリアンのノクターンに変更。
シベリウスが聴けないのは残念でしたが、2曲も聴けるなんて嬉しい限り。
ネマニャ君とシュターツカペレ・ワイマールの共演も楽しみでした。
会場のスタッドハレ。現代的な建物でした。
開演時間の20時少し前でもこの明るさ。
かなり古い宣材写真・・・・・。
そして問題の演奏会ですが。
正直感想を書こうかどうか迷いました。
嘘を書くことはできないし、でもどこまで書いていいものか。
考えた末、あくまでも個人のブログなので、私が見たこと、感じたことを、書ける範囲で感想として残すことにしました。
この日、ステージに置かれた一脚の椅子。コンマス席の前、指揮台の横。
ネマニャ君の立ち位置であるはずの場所。
その椅子を見た時から違和感を感じ、なんだか嫌な予感がしました。
そして開演時間。
オケの皆さま、指揮者のステファンさんがご登場。
でも肝心のソリストはなかなか出てきませんでした。
しばらくして、ステージに現れたネマニャ君。いつもなら颯爽と登場するはずが。
この日のネマニャ君は誰の目にも明らかに異変を感じさせる登場でした。
ファースト・ヴァイオリンの方々の椅子に手をかけながら、ゆっくりと一歩一歩ずつ歩いてくる姿。
一人では歩くのがようやくといった風に見受けられました。
そして置かれた椅子に苦しそうに座った姿を見て、嫌な予感が確信に変わり、その瞬間から私は泣き出してしまいました。
椅子の上でほんの少しだけ座る位置を変えるのでさえ、苦しそうな表情で少しずつ体を動かして、ようやくといった感じ。
何が起こったのか理解ができませんでしたが、この状態で弾くなんて無理にも程があると思いました。
オーケストラのメンバーさんのような姿勢で座ることさえできなかったようで、体を投げ出すような状態で椅子に座り、本当に苦しそうで辛そうだったのに。
そんな状態なのに、弾いてみせました。信じられないことに。
座り位置を少しずらすだけでも、苦しそうな表情を浮かべて、辛そうにしていたのに。
そんな状態でもオーケストラの方に苦しそうに顔を傾けて、苦しそうな表情の中に笑顔を見せて弾いていました。
見ているこちらも辛くて辛くて、本当に苦しくて号泣しながら聴きました。
どうしてこんな状態なのに出てきたのだろうと。いくらなんでも無茶すぎるだろうと。
こんな無理をして今後のヴァイオリニスト人生に響くかもしれないのにと。
でもきっとネマニャ君は、そんなことより、今日、このステージを楽しみにしている方々を裏切ることはできなかったのだろうなと思いました。
「過去より、未来より、今が大事。今一瞬、一瞬が大事」というネマニャ君らしい選択だなと。
私にとっても今回は手術前の最後の渡欧だったので、万が一があったら、これが最後になるかもしれないので、今回の4公演は精一杯聴こうと考えていました。
でもこの日の演奏を受けて、こんな状態ではきっと翌日のフィーアゼンはキャンセルするだろうな。
きっとデンマークにも行けないだろうなと、そう考えていました。
これがもしかしたら私にとって最後に聴くネマニャ君の演奏かもしれないのだなと、これでお別れなのかなと、ぼんやりと考えていました。
でも本当に辛そうな苦しそうな、あんな状態でも、懸命に弾くネマニャ君を見て。
もしこれが最後でもいいかな、と考えていました。
私はよく「ネマニャ君の音楽がなかったら生きていけない。ネマニャ君が演奏を辞めたら、私長くは生きていけない。」なんてことを言うのですが。
きっとこれが最後でも頑張れそうだなと。
こんな状態でも、命を削るような凄まじい演奏を聞かせてくれたのだから、もしこれが最後になったとしても、そのネマニャ君の想いを忘れずに、手術も頑張るね。
これからも一生懸命生きていくからねと。
そんな思いで、号泣しながら、一音一音を耳に焼き付けて、一瞬一瞬を目に焼き付けて。
本当に辛くて苦しくて、でも一生忘れることができない演奏でした。
ブルッフを弾き終えたあと、「3時間前に【今日は出れないよ】とドクターストップがかかったので。だから今日は座って弾いてすみません。」と語ったネマニャ君。
会場から温かい拍手が送られていました。
やはり無理して出てきたのだなと、涙が止まりませんでした。
ハチャトゥリアンのノクターンを弾き終えたネマニャ君。
やはり辛そうな足取りでステージから去っていきました。
何が起こったのか全く理解できず、ただただ大号泣。
足がガクガクし、私も一人では歩けないような状態。
主人に支えてもらいながら、ワンワン泣きながら会場を後にしました。
そんな演奏会でした。
「ネマニャ君どうしたのかな。今頃倒れているんじゃないかな。大丈夫なのかな。どうしよう。」と泣きながら主人に訴えていたら。
この後、ネマニャ君に偶然遭遇するという奇跡が起こった・・・・・。
そして治療のおかげで割とすぐに回復した(本人談)ネマニャ君が、普通に私の名前を呼びながらこっちに歩いてくる姿を見て、「・・・・・・歩けてる・・・・・・。」とビックリし、ビックリし過ぎたのと、普通に歩いているネマニャ君を見て安心したのとで、更に大号泣。
ネマニャ君が色々と話しかけてくれたのですが、ほぼ記憶がないくらいワンワン泣きまくっていたので、仕舞いにはご本人および関係者の方々にも「ネマニャは大丈夫だから。心配かけてごめんね。泣かないで。ごめんね。」と謝られてしまったという・・・・・。
皆様にご心配いただき、ご迷惑をおかけしてしまい申し訳なかったです。
そんな中、唯一ちゃんと理解できたのが「僕あんな状態だったけど、ちゃんと弾けていたでしょ。演奏会良かった?」というお言葉。
泣きながら「うん、うん」とうなずいたら「それなら良かった。僕にとってはそれが一番大事なことだから。」と言っていたネマニャ君。
本当に凄い人です。改めてそう思いました。
そして毎回驚かせてくれるけど、今回のは本当に寿命が縮まりました・・・・。
こんな感じで泣きっぱなしだったヴィルヘルムスハーフェンでした。
今後もただただネマニャ君には無理せず、働き過ぎず、とにかく健康第一でお願いします・・・・というのが今の私の一番の願いです。
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