6月9日・10日にマレーシアのクアラルンプールで聴いた演奏会の感想です。
マレーシア・フィルハーモニック・オーケストラの定期演奏会にソリストとして登場したネマニャ君。
演奏会の詳細はこちら。
FRI 9 JUN 2017 8:30PM
SAT 10 JUN 2017 8:30PM
Dewan Filharmonik Petronas
Malaysian Philharmonic Orchestra
Mark Wigglesworth, conductor
Nemanja Radulović, violin
RAVEL Mother Goose Suite
TCHAIKOVSKY Violin Concerto
STRAVINSKY Petrushka
会場はマレーシア初の本格的な音楽ホールと名高いデワン・フィルハーモニック・ペトロナス。
チャイコン、しかもペトロナス!
これは聴きに行かねば!
という訳でチケットはネットでポチっと簡単に購入。
後は行くだけ。楽しみだなーと思いつつ、時は流れ・・・。
海外の演奏会はあまり早くチケットを買い過ぎると、曲目が変更になったり、最悪な場合キャンセルになったりするので、こまめに情報をチェックする必要があります。
そこでちょこちょこオケのサイトを見ていたら、私が購入した座席を含むエリアがオケ用にキープされてしまったため、私の座席が無くなってしまいました・・・・(涙)
こういう事がたまにあるから海外の演奏会は怖い・・・・(*ノωノ)
結局オケの事務局さんにご連絡して、両日とも買い直すことに。
そしてようやくやってきた演奏会の日。
演奏会場はツインタワーの中にありました。
入り口から入ると広々としたホール。ショッピングセンターのスリアと同じフロアです。
階段を登った2階部分にホワイエと音楽ホールがありました。
立派なシャンデリア。その名の通りペトロナスが資金を出しているのかな。
ホールの中はこんな感じでした。
高い天井が印象的、木が多用され温かみがある中にもゴージャスさもある空間。
9日のチケットの売り行きは上々。
前方は空席がちらほらありましたが、8割方は埋まっていたように思います。
チャイコンが余りに強烈過ぎて、ラヴェルや火の鳥の印象が・・・。
殆ど記憶にありません。
ネマニャ君のチャイコンを生で聴くのは本当に久しぶり。
多分6年ぶりくらい。
チャイコンは私にとってはメンコンと同じ印象を受ける曲。
特別クラシックファンでない方でもどこかで必ず耳にしているような曲。
多くの方に非常に良く知られた協奏曲なので、知られ過ぎて新鮮さがないというか、耳に馴染み過ぎている分、弾く側にとっては色々な意味で難しいのではないかと感じています。
そんなチャイコン、ネマニャ君が演奏すると全く違う曲に聞こえて、「えっ?これがチャイコンなの?!」と驚きます。
とても新しくて深くて、生きる力強さに溢れ、瑞々しくて。
これまで知らなかったチャイコンの新しい面を見せてくれると共に、でもどこまでもチャイコフスキーという本当に素晴らしい演奏。
この日の演奏は凄まじく素晴らしく、記憶に残るネマニャ君のチャイコンの音を凌駕する途轍もない演奏でした!
凄い・・・・としか言いようがなかったです。
すべてが美しかったです。
遠くを見つめながら、旋律を歌いながら。
身体中でリズムを取りながら、溢れ出てくる喜びを抑えきれないように、幸せそうな満足そうな微笑みを浮かべて。
どこまでも澄み切ったピッツィカートの美しさ、息をするのも忘れてしまいそうな世界を征服するみたいなカデンツァ。
協奏曲という名の通り、華やかに熱狂的に響き合うフィナーレ。
本当に素晴らしい演奏に涙が止まりませんでした。
会場の聴衆の方々やオケの皆様からも当然大拍手大喝采。熱気が凄かったです。
短いスパンで聴いていても、常に進化しているネマニャ君。
自分で自分をどんどん超えていくお姿には毎回驚愕すると共に、その裏側にある努力や葛藤などが垣間見え、心から尊敬します。
凄い人になってしまったものです。
そしてこれからもどこまでも高く高く昇っていくのだろうな。
演奏中珍しく両腕を後ろに動かして肩回りをケアするような軽い運動をしたり、下げた左手の指先を何度も動かしていました。
流れる汗もヴァイオリンを伝ってステージに滴るほど。
あれだけの演奏にきっと体中のあちこちが悲鳴を上げていたと思います。
体力を消耗して疲労困憊だったと思われます。
それでも鳴り止まない拍手に応えてアンコールに披露したのはパガニーニの「Caprice24/5」。
一段と進化した完璧な演奏!
聴く度に少しずつ微妙にアレンジを変えている事が多いこの曲。
完全に仕上がった感がありました。
散りばめられた超絶技巧も難なく弾きこなし、客席からは「ほぅ」と自然にため息が、そして演奏後には「わーっ!!!」と喝采が沸き起こりました。
ネマニャ君とセドラーさん、凄過ぎる!このアレンジ本当に大好き!
セルビアが生んだ至宝、天才アレンジャーと天才ヴァイオリニストの奇跡の競作です。
しかもお二人とも努力する天才だから本当に凄い・・・。
セドラーさんはご自身で様々な楽器を演奏されるし、作曲もされるし、編曲もされるし、指揮もされるし、バンド活動もされるという、非常に多彩な方です。
「Aleksandar Sedlar Bogoev」とYoutubeで検索すると、様々なワークスがご覧いただけます♪ご興味がある方はぜひ。
こんな感じで素晴らし過ぎた演奏の後は、必ず発動する私の人見知りならぬネマニャ君見知り。
あまりにステージの上でのお姿が凄過ぎると、全く別人みたいに思えて、知らない人みたいに思えてきます。
私ごときがお声をかけさせていただくのは畏れ多いというか申し訳ないような・・・・。
そんな感じでしたので、終演後のサイン会時も「感想をお伝えしたいけど、いや無理!だってこの人知らない人だもの・・・。」という状態になっていました。
サイン会のご様子。階段沿いに並ぶ方々の長蛇の列。
サイン中のネマニャ君。大人気でした。
とりあえず少しだけお話させていただきましたが、完全に挙動不審だった私。
「前にチャイコン聴きに行ったでしょ。あの時と全然違った!今日本当に凄かった!美しかった!」とお伝えしたら「ああ、ベルギーだったよね。懐かしいねー。」とネマニャ君。
あの頃はまだまだ若手演奏家で、すごくシャイで、演奏後にうなじが見えるくらい深々とお辞儀をして、恥ずかしそうにステージから走り去っていたネマニャ君。
「ネマニャは凄いね!」って誰かに褒められると「そんなことないよー。」っていつも恥ずかしそうに笑っていました。
今は本当に堂々としていらして、口元で小さく「Merci」「Thank you」と呟きながら、聴衆の方々の反応をしっかり確かめるように客席中を見渡し、とても嬉しそうな笑みを浮かべて、手を振りながらステージから去っていかれます。
昔と変わらないのは相変わらずうなじが見えるくらい深々と頭を下げるお辞儀くらいかな。
お顔立ちも随分変わったし、立ち居振る舞いも変わったなあと常々思います。
一流演奏家としての自覚や自信、演奏活動の充実ぶりが伝わってきます。
それでも全く変わらないのはネマニャ君のお人柄。
今も昔も変わらず、明るくて優しくて穏やかで思いやりがあって。
周囲の方々を常に気遣って。
親しいご友人に「不思議の国のネマニャ」と呼ばれるというお話を聞いたことがありますが、本当にその通り「この世にこんな人がいるんだな。」って思う天使みたいな方。
太陽みたいな明るさと月みたいな繊細さを併せ持つ、本当に不思議な方だなと思います。
演奏の凄まじさ、素晴らしさ、そしてステージを降りた時の優しさ、無邪気さ。
そのギャップに多くの方が魅かれるのも納得。
演奏会の度に行く先々で、新しいファンの方々を次々と獲得されているのも本当に納得です。
こうやってネマニャ君を100%べた褒めな私ですが、たまにそうじゃない時も勿論あります。
演奏会の事とか、それ以外の活動の事とか。
感想とか気になった点とか、ご本人にお伝えすることがあるのですが、100%良い意見ばかりではありません。
「こんな事言ったら気を悪くされるかな。」と思う時も多々ありますが、「でも率直な意見だし。思った事はきちんとお伝えしたい。」と思い、直接お伝えしたりお手紙に書いたりしています。
そんな時もきちんと話を聞いてくださったり、お手紙を読んでくださったりして、「自分はこう思っているんだ。」とご説明してくださったり。
「あれは凄く良い意見だった。ありがとう。」と仰っていただいたり。
良い事にも悪い事にも、きちんと耳を傾けてくださって、毎回とても誠実に真摯に受け止めてくださいます。
そんな所も昔から変わらず。本当に度量の広い方だなと思います。
そして翌日10日の演奏会。
前日とはまた少し趣が異なった感のチャイコンでした。
こちらも研ぎ澄まされた集中力と、歌心溢れる美しい音、空気を撫で切るようなピッツィカート、圧倒的なカデンツァと完璧かつ素晴らしい演奏。
そして完璧なアンコールのパガニーニ。
全体的に半端なく仕上がった感。
この先まだ上に昇るとしたら、そこにはどんな景色が待っているのか。
怖いくらいでした。
終演後のサイン会は前日を遥かに上回る長蛇の列。
私もご挨拶だけして、ネマニャ君にお願いしてお写真を1枚だけ撮らせていただきました。
マカオまでは髭を伸ばしていて、顔の下半分を覆うくらいだったネマニャ君。
これまでも髭を伸ばしていた時期はありましたが、今回ほどの長さは初めて。
あの髭が賛否両論で、割と保守的なファンの方が多いフランスでは「私達のネマニャがあんな髭面じゃダメよー。」なんてあれこれ書かれたりもしていました・・・(;・∀・)
見慣れてしまうと「大人っぽくて素敵だな。」なんて思っていた私。
そんな訳でKLでさっぱりされていらしたお姿を見て「あっ、髭無くなった・・・。ちょっと残念。」なんて思いつつ、相変わらず自由気ままなネマニャ君に「次はどんな感じで驚かせてくれるのかな?」と楽しい気分になりました。
何はともあれ大成功だったKL公演。
素敵なチャイコンを聴くことができて本当に幸せな2夜でした。
オケの皆様、指揮者のマークさん、そしてネマニャ君。
素晴らしい演奏をありがとうございました!
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